伊豆に行く

何故突然ビールのアップが登場するのか?

・・・それは雨だったからですーーー

昨年に引き続き日本山岳会の図書委員会での山行が先日あったのですが、初日は朝からの雨。本来なら天城峠南に控えている渋い私好みの山、登尾(のぼりお)に登る予定だったのですが修善寺に到着すると同時に、振替予定の地ビール工場「ブルワリー」へ直行。

開店と同時に入場し昼過ぎには皆さん、すでに「出来上がって」いらっしゃいました。

しかし、そこでは普段の委員会などでは語られない山談義に盛り上がり、とてもいい親睦の機会となりました。テーブルを囲んだ数人の話題にのぼったのが串田孫一らが主体となって300号まで編まれた山の雑誌『アルプ』。壮年の方たちが「若い頃はこんな雑誌をバカにしていたけどね…」と仰りながらも、その価値を深く語られるのに引きこまれ、辻まことに話題が集中した時には最高潮となりました。

「辻まことは立ち位置も関わり方も、『アルプ』の中での存在もちょっと特殊だったかもしれない。が、彼はそこでうまく『アルプ』を‘利用していただろうし逆に『アルプ』によって表現の世界を拡げられたことにもなる・・・」ーこの表現云々については私も絵描きのはしくれなので、とてもよく分かるのです。描く場所、提供する場面を強いて与えられると、不思議と自分を越えた表現が生まれてくるのです。自分の描きたいもの、表現したいもので「殻」を突破していくのは長い年月の創作のなかでは当然あり得ますし、それが創作なのですが、外部から「場」を与えられることにより、思わぬものが出てきて開けることがあります。辻が本当に絵を描き始めたのも、『アルプ』によって場が造られたからかもしれません。

また『虫類図鑑』(筑摩書房)にも話がおよびました。そこに登場する辻の描くところの「虫たち」は悉くシニカルな表現に溢れるのですが、私がふとたった一つだけ美しい「虫」を彼が描いていることを思い出しました。それは「友情」という名の虫でした。その話をすると談義の中心的存在だったiさんが「そうなんだよー、彼も‘希望’が欲しかったんだよ〜」とほろ酔いのなかで頷いたのでした。