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北海道の旅Ⅱ

暗くなる前に駅まで戻ろうと16時頃に「北のアルプ美術館」を失礼し雪道を歩き出しました。空は夕刻に向かい淡い桃色に染まりだし、振り返れば生クリームをもっこり盛ったような純白の海別岳が雑然とした町の向こうに、この世のものとは思えない美しさで在るのです。息を呑むような神々しさ… ほとんど車も来ない車道の真ん中に立ち止まっては、思わず小さな画帳に描きます。

 

もっと見える所があるはず!もうすぐ夕闇になってしまう!と心は急くばかり。何度も何度も振り返りつつ駅に向かい必死で小走りし、駅手前に線路をまたぐ高架橋を見つけました。駆け上るとやはりそこからが一番よく海別岳だけでなく斜里岳もよく見えます! 

手元が見えなくなるまでスケッチしていると、辺りはもう真っ暗。白い山もぼんやりとして、もう形がつかめなくなっています。やむなく駅に戻り「本当に美しかったなー」と感慨に耽りつつ、冷えきった身体を暖かい駅舎の待合室で温まりながら夕刻の鈍行列車を待ちました。今夜の宿は清里町、斜里岳の麓にあるペンションです。

ペンション「ロッジ風景画」は昨年末、たまたま耳にしたNHK第一の「ラジオ深夜便」の「日本列島くらしのたより」にオーナーの山下健吾氏がリポーターとして登場していて、その存在を知りました。

早速翌日ネットでペンションを調べ、メールにて連絡を取ってみました。そして場所が「北のアルプ美術館」とさほど遠くなく、列車で行っても宿へ送迎して下さるとのことで、旅の計画の具体化にグッと力を与えてくれました。

 

斜里岳を描きたかった私にとって、居ながらにして正面に山を見ることの出来る宿は願ってもいませんでした。でも実際は生憎、前夕 高架橋で描いて以降、斜里岳はずっと雲に隠れて全貌を見ることが出来ませんでした。

しかし斜里岳や海別岳を近くに見て、北側にはオホーツク海を望める自然豊かな只中にあるこの宿は、これからも北海道を訪ねるときには大きな魅力(足場)になることに違いありません。