南の島 その4

これは下山開始をして「平岩」という眺めのいい場所近くまで来た時に見えた宮之浦岳です。あまり良くなかった天候でしたが、山の神さまが、遠路やってきた山好きにしばし下さった風の狭間の見晴でした・・・。一日を振り返ります。

明けて翌朝。

さあ、今日は宮之浦岳に向かってのメインの日です。が、上空は相変わらず物凄い強風で山がゴーゴーと唸りを上げいます。稜線ではきっとまともにこの風を受けるでしょう。頑張って、登りスタートです!

 

登山道は木道や階段が作られていて整備されていますが、このように岩場にもちゃんとロープがかけられています。一見手強そうですが、花崗岩で滑らないため、足がかりもあり登ってみれば大したことはありません。(あの丸太橋通過に比べれば、どうってことない!)

 

高度を上げるにつれ、だんだんと樹林限界近くとなりヤクシマザサが優勢になってきます。ヤクスギもヤクシマシャクナゲも、しょっちゅう吹き付ける強風で矮小化し捻れて耐えています。

稜線ではそうした緑の中にニュウッと突き出たような奇妙な岩があちこちに現れ出します。まさに花崗岩の山、屋久島の奥山の景観です。

 

重いザックを背負っていても身体がよろめくような強風で、吹き飛ばされる雲のなかを登山道沿いに歩を進めますが、時折気まぐれな風のせいでパーッと視界が晴れます。その瞬間、アッと息を呑むような光景が目の前に現れ、初めて自分がどんな所を歩いているのかが分かります。

幾つかのピークを越え、次か次か…と頑張っているとようやく人の声が上から届いてきます。宮之浦岳山頂です。

 

さすが「日本百名山」、天候が今ひとつでも数組のパーティーがいます。が、強風で視界もない為か次々と下山、いつの間にか誰も居なくなってしまいました。岩の陰でお湯を沸かし取り敢えず簡単な昼食を取り、さてお茶でも・・・と思っているとザーッと雨。慌てて合羽を着こみ荷物をまとめて下山開始。ところが風と雨でメガネも曇り、視界を狭める合羽のフードで白い花崗岩の脇道に入り込み、いつの間にやら「鹿道」に入ってしまいました。しかも一番風当たりの強い場所。同行の仲間と「変だ、間違えている!」と言い合い地図を確認しようと・・・「あれ〜っ!」一瞬で地図が風とともに〜・・・(汗)まずい! 山中一番の場所で地図紛失とは…。焦っても仕方ありません。諦めてもう一度、その道を確かめに行くと・・・地図がなんと低木で密生しているミヤマビャクシンに引っかかっているではありませんか…。こういうのを「超ラッキー」と言うのでしょう、助かりました。

間違いや迷った時の鉄則=元に戻る・・・どうということなく、本来の登山道を見つけ下山開始です。

 

急降下を下り、永田岳への分岐を分け「平岩」近くまで来た時に一息入れました。と、気まぐれな風が大きな雲の塊りをスーッと動かし目の前に宮之浦岳が現れました。

 

山中でくっきりと全体が見えたのは振り返ればこの時だけでした。この瞬間を逃すまいと、すぐにスケッチ開始。いつ霧が被るかわからないのでまずは一枚、葉書サイズにデッサン。まだ大丈夫そう…と見て、次は横長のスケッチ・ブックに三枚連続のスケッチを立て続けにしました。「色はつけないの?」と同行の山友が尋ねる間もなく、サーッと再び雲がやってきて、あとはもう姿をあらわすことはありませんでした。今回は着彩までの時間はないだろうと鉛筆一本でしっかりと形を把握しましたが、この短い時間で宮之浦岳への思いは遂げたように感じるひとときでした。