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南の島 その5

この美しい写真、これは高塚小屋で迎えたようやくの晴れた風のない夜空です。もちろん、こんな撮影の機材も腕もない私・・・。同じ晩に宿泊し、翌日もたまたま追いつ抜かれつで下山した三人組のパーティーのお一人の画像を見せてもらいお願いして後日、送ってもらったものです。すてきですね〜! 肉眼ではこれほどまでクリアーに見えないですが、でも、天の川が白く輝いているのはこの目でもちゃんと見える美しい夜空でした。

 

そして屋久島といえば「縄文杉」ですが、こんな写真ではその迫力、大きさ、凄さなど勿論伝わりません。現場に行けばこそで、だから多くの人が遠路、汗をかきかき桟道や山道を何時間も歩き登り「会い」に行くのです。

 

けれど、三日間山の中を歩いていて感じたのは、実はこの「縄文杉」の凄さより山全体が持つ、島の自然の深さや力(エネルギー)でした。まるで(例えは変ですが)ジャングルの中を“虫けら”が徘徊しているようであり、また森そのものが「生き物」であり、あたかもうごめいているようなエネルギーを始終受けとめつつの山行でした。

 

入山前に「紀元杉」の足元でノックアウト状態になったまま、あとは「スゴイスゴイ!」の連続で、核心部の稜線上では強風によろめきながら海上にある2000m近い山のなかで雲や霧に翻弄され自分はゴマ粒同然でした。

 

そうした実感は経験値として色濃く自分の中に蓄積され、下山途中に「お立ち台」を設えられ観覧順路も指定されている向こうに立っている「縄文杉」とは比較できないものです。好天のもと楽しく歩ける山は最高ですが、台風の狭間でのなんとか凌げた三日間の屋久島訪問は、多分、気楽に歩けたのとは異なる何モノかを与えてくれたと思うのです。

 

ただ、山中に居る間に瞬く間に発生した台風12号のせいで、下山後に楽しみにしていた「屋久島観光」は一秒も出来ませんでした。翌早朝、朝一番の高速艇で出発しないと「あとはもう離島の保証はできない」と民宿のご主人に諭され、厳しく恐ろしい自然の猛威の前ではそうする以外にはありませんでした。そして、高速艇「Rocket」と超高速の「新幹線さくら」のおかげで台風に追いつかれることなく、無事離島し本州に辿り着いたのでした。(「南の島」おしまい)