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最北端への旅 その3

さて「豊清水」でかなりの時間を過ごした後、動き出した列車。乗客は地元の人一人と乗り鉄のお兄さんと私だけで、まさしくJR北海道の厳しい現実を肌で感じるのですが、それでもやはり列車を待っている人もいます。

 

長いこと停車した「豊清水」の次の次、無人駅「咲来・さっくる」で大荷物を背負ったバックパッカーが乗車してきました。聞けば野宿をしながら歩いて回っているとのこと。その人は私に「どうして遅れたんですか?」と尋ねてきました。誰もいない無人駅で、どうして列車は来ないのだろう…とずっと待っていたはずです。

そして遅延の為に予定していた「音威子府」での停車時間がなくなり、食糧補給も叶わず「朝食を仕入れることが出来なくなりました」とも。山での縦走で、ちょっとした美味しい食材をもらったりすると嬉しくもありがたい経験がある私は、手持ちの“お菓子パック”からチョコビスケットとナッツ・バーの行動食を差し出しました。多少の足しにはなったかな?です。このバックパックの人は「問寒別・といかんべつ」という何もない駅で下車しました。再び雪の道を単独、歩いて行くのです。ご本人曰く、出身地は関東だが今は北海道に住んでいて夏はバイクで、冬はこうして徒歩でウロツイているのですと。北の大地では、こうした「強者」が時折居るとのこと、同乗の乗り鉄お兄さんが語っていました。鉄道もスゴイけれど、そこに生きている人もまたスゴイと驚きです。

 

驚きは続きます。各停で停まる駅は殆ど無人駅なのですが、その駅舎もかなり年季が入っているものが多いなか、これは「◯ナバの物置」そのもの!の「糠南・ぬかなん」駅です。秘境駅の一つらしいですが、乗降客は居ません。こうした駅が幾つも続くのが宗谷本線各停の名寄以北の現状です。

 

いくら頑張っても人口が少なく利用客の確保が望めない路線は、いずれ廃線に向かうしかないのか…と重い気持ちになりますが、旅情などでどうなるものでもありません。それでも無人駅のすべてはどこも必ず除雪されており、車両や路線整備にしろ、大方の安全確保の作業は人の手によるものです。どれだけの人たちが安全運行の為に極寒の中、厳しい作業に従事していることでしょう。冬の平日の各停は数人のみの乗客でしたが、特急列車にはそれなりの利用者があります。特に仕事で利用する人には欠かせない移動手段だと聞きました。もちろん貨物輸送で占めるウェイトも小さくありません。鉄道の役割は今だ重要であるはずです。