早春 北海道の旅 その4

 

本来なら中札内周辺で集中して描こうと考えていましたが、靄った山を前に潔く帯広を後にしました。

 

気象情報で天気図と雨雲の動きを調べると、帰路で向かう函館方面も悪くなさそうです。度重なる北海道訪問の際、必ずと言っていいほど繰り返し使う函館本線。その車窓には毎回、美しい駒ケ岳が見え隠れしていましたが、通過するばかりで実際に現場に降り立ったことは一度もありませんでした。そこで、北海道新幹線の始発駅に近い「大沼公園」に向かい、駒ケ岳が見えるかどうか、“勝負”を賭けてみることにしました。

 

しかし本命はもう一つありました。

函館本線にて窓外の駒ケ岳を毎度しつこく眺めていて、大沼公園駅より特急で一つ手前に停車する「森駅」からの姿がまた美しいのです。

 

釧路本線を南千歳で乗り換え、函館本線にて南下、いよいよ八雲(やくも)を過ぎ海岸線に沿って駒ケ岳が見える地点に近づいてきました。ドキドキしながら列車内のデッキに移動し、窓に顔を張り付けるようにして駒ケ岳を待ちました。

「見えた!!」「やったーー!!」

しかも降り立った森駅では、なんと!ホーム居ながらにして真正面に駒ケ岳がドンッと構えているではありあせんか。思わず涙が出そうになりました。一言駅員さんに断り、それからの一時間強、無我夢中で菊判の和紙いっぱいに駒ケ岳を描きました。時折特急が行ったり来たり、普通列車も停車しては出ていきましたが、自分の乗車する次の特急までの時間、めいっぱいを使えました。まさかホームで描けるとは思っていなかったので、これはありがたい誤算でした。すぐ左手は海です。ちょうど描き終えた頃に、まるで図っていたようなタイミングで急に突風のような強風が吹き始めました。もうとても紙を拡げて置けるような状況ではなく、ちょうど区切りが付いた時でこれまたありがたいことでした。

 

それまで思い切り描けなかった分、若干意気消沈の疲労感が漂っていた矢先に爆発的に描きまくった一時間半。描き終えて今度はちょっともぬけの殻みたいになり、大沼公園駅に降り立ちました。取り敢えず観光協会にて周辺のマップと情報をもらい、昨日急な予約にも拘らず、気持ちよく受けてくれた民宿に向かいます。

 

予約の時には気づきませんでしたが、その民宿は国定公園・大沼の際にあり、翌朝、思いがけない時間を過ごすことになります。