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ひっそりとした峠をつなぐ

十連休の後半、静かな峠をつなぐ山歩きをしました。昔の社会人山岳会の仲間は仕事で多忙な日々。こうした連休以外は山に行けません。一人は千葉の東金から早朝車を走らせ横浜までやって来ました。貴重な休日、どこに行こうか考えた末に、私の好きな山梨県・秋山村(現上野原市)に出かけることにしました。

 

高速道路を使わずに裏道利用で渋滞も関係なく、着いた秋山村のなかも静かなまま。各地の大混雑がウソのようです。

 

さて歩き出しは浜沢集落から立野峠に向かいます。

まず車道から入る登山口に立派な「浜沢薬師堂」があり、立ち寄ってみれば大きなケヤキの巨木が! これは一見の価値あり。出だしから三人で「オオーー!」と盛り上がりました。

 

 

天候は曇りがちでしたが、後から思えばそれでちょうどよい陽気だったようです。だんだん日差しが出だすと暑さが増して、登りや山中で涼しく過ごせたのがむしろよかったとわかりました。

 

 

それにしても本当に美しい、何度となく浸ってもこの新緑の世界は飽くことがありません。「生涯であと幾度、桜の咲くのを見られるか?」という科白はよく聞きますが、私が思うには、この新緑の美しさにこそこの科白を使いたくなります。

 

同行の仲間曰く「あー、これで半年分の命がつながる〜!」 会社のデスクや現場に缶詰で終日働き詰めの毎日、そのための命の洗濯がこの日の美しい新緑の山歩きでできたのなら私も本望、嬉しいことでした。

立野峠からは中央本線沿線の山として最も有名な倉岳山への稜線となります。が、その日は倉岳山には向かわずに反対の東へ、鳥屋山・寺下峠の方に向かいます。

 

ひと登りして南側を見ると、正面になんとも立派な姿の二十六夜山が見えました。この位置から二十六夜山を見るのは初めてのことで、あまりにも威厳のある姿に驚いてしまいました。これは冬枯れの時期に再訪して描きたい!

 

そうした自分の思い入れだけでなく、この日の山行に同行の二人もそこそこ喜んでくれたようで、それは何よりも新緑の美しさとこの山稜の静けさだったと思います。

「一人にも会わなかったね…」と面白がり満足そうに言う仲間の言葉に、私自身も満ち足りた気持ちで下山後の車道を汗をかきかき歩いていきました。