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笹尾根を訪ねる

机上での仕事が立て込んでいるなか、緑爽会(りょくそうかい)という日本山岳会の同好会での山行案内に誘われ、大好きな笹尾根を歩いてきました。

 

会山行なので、下見もしてくださったリーダー始め会員の方の先導で、上川乗のバス停から稜線の北側を浅間峠へ登ります。

今回は緑爽会の山行らしく、いにしえ『山と渓谷』を著した田部重治の足跡をたどっての山行です。岩波文庫(『新編 山と渓谷』近藤信行編)には掲載されていない箇所など資料もいただき、山中では「野営したっていうのはこの辺かなー」などといろいろと想像をしながら晩秋の笹尾根をゆったりと歩きました。

浅間峠から笹尾根の稜線歩きはちょうど紅葉の見頃となっていましたが、一ヶ月前の下見の時にはまだ緑影で見晴らしが殆どなかったし、全然様子が違うとリーダーたち。この日は色づいた晩秋のいい山日和に当りました。

 

途中の陽の当たるなんとも言えない素敵な鞍部にてお昼の時間としましたが、そこはその日一番の“穴場”でした。誰もやって来ない貸切の場所にて、それぞれが「秋の山のよさ」を胸いっぱいに、そしてお弁当でお腹もいっぱいの時間を過ごしました。

 

そこからしばらく行くと日原峠、あとはそこから下るだけ。5分ほど下ると、不思議なことに植林帯の一角から勢いよく水が出ています。峠に「飲料水」という看板があったのがこの水のことですが、「飯を炊いた」という往時の田部重治もこの水場の水で救われたのでしょうか…。植林だらけの山となってしまった周囲を、当時の茫々とした藪の様子などと想像しつつ頭のなかでタイムスリップしました。

そうして明治の山旅を思い描きながらの緑爽会らしい山歩きも、斜めの秋の日差しのなか、下山口で南秋川の流れを渡り早夕方には帰路のバスの人となりました。